レコードは昔のSPからEP、LPと進化して、今ではCDになっています。CDは昔のアナログ録音を補正した復刻版もありますが、主力はデジタルで録音されたサウンドです。コンパクトディスクと言われるだけにそのサイズはLPとは比べ物にならないほど小さくなりました。それにつれてジャケットも従来のLPのようなデザインやレイアウトでは対処することができなくなっています。
CDジャケットは言わばブックレットで、小型本のような感覚でのデザインが要求されます。CDジャケットは、表紙と中面、裏表紙、背表紙などですが、メインとなるのは表紙です。わずか12㎝四方の面積しか使えないCDジャケットで、その中に納まっている音楽に関することが分かるようにするのは、考えてみれば至難の技かも知れません。
しかも特殊なCDジャケットともなると、3D的な立体感があるものもでてきました。グラフィックデザイナーはポスターからステッカー、あるいは立体的なPOPなどのデザインを要求されますから、CDジャケットもその延長線上にあると考えれば難しいことはないように思えますが、これだけしかないスペースをいかに効率よく利用するかとなると簡単な作業ではないのです。
しかも、CDは星の数ほどもありますから、そのCDを如何にして目立たせるかということになりますと、その難しさには際限がないでしょう。そこでCDジャケットを制作するグラフィックデザイナーには、さまざまなことが要求されます。それは色彩学、心理学などの分野にも及ぶでしょうし、マーケティング戦略もデザインに関係してくるでしょう。ですからただ単にCDの内容を盛り込んで、ビジュアル的にきれいなCDジャケットではなく、ユーザーが手に取って思わず買いたくなるようなものでなければなりませんし、購入して音楽を聴く際に曲目や歌詞、演奏者についての情報もどこかに盛り込まなくてはなりません。
このように考えますと、たかがCDジャケット、されどCDジャケットで、グラフィックデザイナーのセンスとアイデア、その他の知識を必要とするのがCDジャケットの制作だと言えます。CDは中身が表紙よりも大切なのは当然のことで、ユーザーはCDジャケットが気に入ったからそのCDを購入するということではありませんが、なかにはCDジャケットを絵画や写真のようなインテリアとして飾る人もいます。このような要求にも応えるようなCDジャケット制作は、まさにグラフィックデザイナーの能力を発揮する場だと言えるでしょう。そのCDが売れるかどうかは音楽がメインであるにしても、CDジャケットの善し悪しも少なからず影響するのではないでしょうか。
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IT・デザイン・クリエイター向け求人サイト、グラフィカルジョブのライターです。デザイン業界に関する皆さんの疑問にお答えできる記事を投稿していきたいと考えています。