有名なグラフィックデザイナーは何人もいますが、ここではその中の一人として、山口 信博(やまぐち のぶひろ)氏をご紹介しましょう。山口 信博氏は1948年(昭和23年)千葉県生まれのグラフィックデザイナーで、現在は有限会社山口デザイン事務所の代表を務めています。
山口氏は、別に折形デザイン研究所を主宰し、日本の伝統的な礼法として知られる、折形とモダンデザインを融合する試みを探求しているグラフィックデザイナーとして有名です。また、山口氏は俳句結社「澤」の同人でもあります。山口 信博氏の著書には、「白の消息」、「つつみのことわり」、「贈りものの包み方」その他共著では「半紙で折る折形歳時記」などが多数あります。
ここで、ネットサイトにある伊勢貞丈「包之記」の研究という山口氏の説明を引用します。なお、ここでは原文そのままではなく、山口氏の考察について述べることにします。それによりますと、「折形は贈答の際の包みと結びの礼法であり、その折形のバイブル的な存在になっているのが伊勢貞丈の「包結図説」です」。
この本は、「江戸の中期、天保十一年(1840)に出版されたもので、包之記」を上巻、「結之記」を下巻として、両方を合わせて「包結図説」と呼ばれています」。「包之記」には二十三種にも及ぶ折形が図入りで紹介されていて、そのほとんどすべてが完成図と展開図が見開きで示されているだけです。したがって、この完成図と展開図の間にある、省略された手順をダイアグラム化することで、その思考の原理を読み解くという試みが山口氏によりなされています。
さらに、山口 信博氏と折形デザイン研究所は十年余にわたり古典と向き合い、そこから得たものを飛躍して具体的な形にするかを研究していろとのことです。ここまで来ますともはや単に山口 信博氏はグラフィックデザイナーという固定された職業から大きく離れ、ある意味では日本の文化研究家的な存在であると言えるでしょう。それも折形という一見誰もがそれほど関心を示さない分野に注目されているのは、山口氏のデザインセンスが今の3D志向にあるのかも知れません。そう言われて見れば無造作に贈りものの包みを破るようなことはできなくなります。実際にはデパートその他商品を包む技は日本人にしか見られない繊細で極めて理に叶ったテクニックがあります。これは海外では見られないことで、その手さばきは見事で見とれてしまうような人がいますが、その人は多分昔の伊勢貞丈のことを知らないでしょう。
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IT・デザイン・クリエイター向け求人サイト、グラフィカルジョブのライターです。デザイン業界に関する皆さんの疑問にお答えできる記事を投稿していきたいと考えています。